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天使の羽 |
全盲のピアニスト辻井信行さんが国際ピアノコンクールで優勝したニュースは、 多くの日本人に感動を与えました。 障害児を育てている多くのお母様方にも、 大きな夢と希望を与えるニュースだったのではないかと思います。
その一方で、 「私はこのお母さんみたいにはなれないわ…」 「我が子のいいところなんて、才能なんて、見つけられない。 伸ばしてあげられない私はダメな母親だわ…」 と、自分を責めてしまうお母様もまた、少なからずいらっしゃるのではないかと心配しています。
こうしたニュースがあるたびに、 またドラマやドキュメンタリーで取り上げられるたびに、 喧伝される「偉大な母親」像。 もちろん、彼女らが人の何倍も苦しんで努力してきたこと、 それをねぎらい賞賛することにはなんら異議はないのですが、
障害児者の母が全てそうでなければならない。そうならなければいけない。 という押し付けがましさには、激しく違和感を覚えるのです。
そう思っていたとき、こんな記事を見つけました。(以下朝日新聞の記事より引用)
「ロックフェラーの天使の羽」という曲の着想は小学6年、クリスマスシーズンに演奏旅行で訪れたニューヨークで降ってきた。街中で天使の羽のオブジェに触れ、「幸せな気分になり、インスピレーションがわいた」という。
それまでクリスマスの季節が来るたび、いつ子さんは「この子には一生この光が見えないのか」と悲嘆に暮れた。しかし、このささやかな小品が、いつ子さんの絶望を希望に変えた。
そう、障害受容なんて、誰にとっても簡単なことでない。 息子に音楽の才能を見出し、芸術的な感性を育むことに専念してきたいつ子さんにも、 その葛藤はあった。 でも、見えなくても心で光を感じることはできる。同じ喜びを共有できる。 悲嘆から母を救ったのは、ほかならぬ息子さん自身であった、と伝えるこの記事を読んだ時、
ああ、彼らも私たちとなんら変わりない、生身の等身大の人間なんだって。 そう思えました。
どうか全ての母と子に、 「天使の羽」に触れることのできる瞬間が訪れますように。
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