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第八十五番 大吉 |
土曜・日曜と雪が降り続き、外に出る気も起きなかった。 退屈したあきのすけは、 オモチャを散らかしては母ちゃんに叱られ、 デスクワーク中の父ちゃんによじ登っては叱られ、 鉛筆を持ち出して落書きしては叱られ。 「ごはん食べなーい。…かたづけません!」「じゃあ座って食べなさい」「座らなあい」 「お風呂やさん行かなーい。おうち帰らなーい。」「じゃあお買い物に行く?」「おかいものイヤ。くるま乗らなーい」と雪の駐車場で座り込み。 風邪気味で気分が良くなかったせいもあるのだろうが、久々の反抗期+自閉モード全開だ。
家族のストレスがピークに達した月曜日、ようやく気持ちのいい晴天。 近所のお寺へ初詣に行ってきた。 縁日の屋台も並び、楽しげな雰囲気。あきのすけは嬉々として雪道を歩いていく。 無事お参りを済ませたあと、おみくじが目にとまった。 「じゃあ今年はあきのすけに引かせてみるか。」 父に手を添えてもらって、大きな箱を振ると「八十五」と書かれた棒が出てきた。 「お正月のおみくじって、大吉率が高くて、凶は出ないことになってるんだよね」なんて言いながら、いただいた紙を広げてみる。
『このみくじにあたる人は、しょじ発達のおそき事あれども後おほいに仕合わせよし、ゆえに物事せいきうにする事あし…よろこび事おそけれども十分なり』
あき父と思わず顔を見合わせた。 偶然にしては、あんまりできすぎている。 特段の信仰心は持ち合わせていないけれど、すこし神仏の存在を信じてみる気になる出来事だった。
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